神戸家庭裁判所 昭和44年(家イ)303号 審判 1969年4月23日
申立人 国籍 韓国 住所 神戸市
赤石こと周礼子(仮名)
相手方 国籍 韓国 住所 神戸市
周康漢(仮名)
主文
昭和二四年二月一日付神戸市灘区長宛届出にかかる申立人と相手方との婚姻が無効であることを確認する。
理由
申立人の申立要旨は「申立人(元日本人)は昭和二三年三月相手方と神戸市内で同居し、昭和二四年一月八日両名の間に輝明こと同輝照が生まれたので、同年二月一日神戸市灘区長宛婚姻届をなし、同日受理された。もつとも申立人は同人妊娠中、相手方に韓国戸籍上の妻張芳花があることが判つたので、実家に帰り、相手方も妻子のもとに帰つたので、申立人と相手方との同居生活は約八ヵ月で解消した。子供のために上記のように婚姻届をした後も、子供のことで往来はあつたが、夫婦としての交渉は持たなかつた。申立人との婚姻届は灘区長に受理されたままで本国には送付入籍されていないが、韓国民法施行前の重婚は無効として扱われていたから、申立人と相手方との上記婚姻が無効である旨確認の調停審判を求める」というのである。
調停委員会の調停期日において、当事者間に主文のとおりの合意が成立し、その原因についても争いがない。
申立人および相手方各本人の審問結果ならびに金順任の供述を総合すると、申立の事実が認められる。つぎに、本件婚姻が有効か無効かについては韓国法を準拠法と認めるべきところ、現行の韓国民法では重婚の場合、後婚につき取消原因とされているが、同法が昭和三五年に施行されるまでは、同国慣習法上これを無効として扱われていたものである。そして、本件のように、婚姻の実体が新法施行前すでに失われてしまつているような場合には、同法附則二条但書のとおり、新法が遡及すべき限りでなく、その婚姻は無効に終つたもの(本件では本国戸籍に記載されるに至つていないが、戸籍の記載が残存していても、その訂正は事後処理の問題に過ぎない)と解するのが相当である。よつて、申立人と相手方との上記届出による婚姻は無効であり、それを確認する本件合意は正当であるから、調停委員山路久治郎、同楢林小菊の意見をきいたうえ、主文のとおり審判する。
(家事審判官 坂東治)